鎌倉の大仏、半世紀ぶり「健康診断」 超音波でさび取り
年間に百数十万人の参拝者が訪れる「鎌倉大仏」が13日、55年ぶりの「健康診断」に入った。約2カ月かけて、超音波でさびを取り除いたり、免震装置の具合を調べたりする。期間中は大仏が見られなくなるため、地元の観光への影響を懸念する声もある。
神奈川県鎌倉市長谷4丁目の高徳院には13日朝、資機材を積んだトラックが出入りした。栃木県足利市から家族7人で来た会社員の男性(33)は「工事が始まるのは知っていたが、朝早くならまだ見られるかと思い、朝6時半に家を出ました。大仏はまだ待っていてくれました」とうれしそうに話した。
3月10日までの修理期間は境内への入場料(一般200円)が無料になるが、大仏内に入る「胎内拝観」はできない。工事が進めば周囲に足場が組まれ、半透明のシートで覆われる。
1959年から2年半をかけた「昭和の大修理」以来の点検・補修作業で、費用は約6500万円。佐藤孝雄住職(52)は「50年に1度の健康診断。参拝者や地域の方々にご迷惑をおかけするが、ご理解をお願いしたい」と話す。地元の商店街には前もって説明し、理解を得たという。
作業を担当するのは、独立行政法人「東京文化財研究所」(東京都台東区)。国宝のため慎重を期す方針で、エックス線を当てて状態を調べ、さびは超音波メスで除去。ハトの糞(ふん)などの汚れを高圧の水で落とす。また、人や車の振動や潮風の影響も調査。昭和の大修理で設けた免震装置の状態も検証する予定だ。同研究所保存修復科学センターの森井順之・主任研究員(39)は「傷つけないことが大切。得られたデータを今後の保存・修復に役立てていきたい」と語る。
鎌倉を代表する観光名所で、江ノ島電鉄長谷駅からは500メートルほどの参道が続き、多くの商店が並ぶ。「大仏通り」で陶芸品店を営む男性(68)は「大仏様が見られないとなると、影響は大きい。特にここ数年激増した外国人客に情報が広まると、足が遠のくだろう。売り上げの減少が心配だ」。明治時代からの和菓子屋を営んでいる男性(68)も「2カ月間のこととはいえ不安はある」という。
一方、市観光協会の嶋村豊一事務局長(60)は「他にも様々な観光スポットがあるので、鎌倉全体ではそれほど影響はないのでは。点検・補修はいつかはやらなければならないもの。春、きれいになった大仏様を楽しみにしてほしい」と語る。(菅尾保)
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〈鎌倉大仏〉 高徳院の本尊で、正式名称は「銅造阿弥陀如来坐像」。台座を含めた高さは約13・3メートル。仏体の重量は約121トン。不明な点が多いが、鎌倉時代に源頼朝の侍女といわれる稲多野局が思い立ち、僧の浄光が資金を集めて1238年に木造で着工、大風で倒壊したため1252年に現在の青銅製のものを鋳造したと言われる。昭和の大修理では、頭部を支える首の部分を強化プラスチックで補強し、大地震の際は台座と仏体が離れる構造になっている。
(01/13 14:54) 朝日新聞デジタルより |