「令和」に5月1日改元 出典は万葉集、国書から初
政府は1日午前、平成に代わる新元号を「令和」と決定した。「れいわ」と読む。出典は「万葉集」で元号の漢字を日本の古典から採用したのは確認できる限り初めて。新元号を定めた政令に天皇陛下が署名され、同日中に公布する。4月30日の天皇陛下の退位に伴い、皇太子さまが新天皇に即位する5月1日午前0時に元号を改める。新元号は6つの案のなかから決まった。
関係者によると、政府は元号に関する懇談会などで「令和」を含む計6案を提示した。案のなかには中国古典を出典とするものもあったという。
菅義偉官房長官が記者会見し、墨書を掲げて公表した。官房長官は万葉集巻五、梅花の歌三十二首の序文「初春の令月にして気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭(らん)は珮(はい)後の香を薫す」から引用したと説明した。「新しい元号が広く国民に受け入れられ、日本人の生活のなかに深く根ざしていくよう努めたい」と述べた。
日本最初の元号「大化」から248番目となる。これまで天皇の即位前に新元号を公表したことはない。憲政史上初の天皇退位に伴う対応だ。平成は1989年1月8日から2019年4月30日までの30年4カ月で幕を閉じる。
政府は3月14日に複数の学者らに新元号の考案を正式に委嘱し、それぞれ2~5つの案の提出を求めた。1日午前9時30分から首相官邸で有識者による「元号に関する懇談会」を開いて元号案をめぐって議論した。山中伸弥京大教授や榊原定征前経団連会長、作家の林真理子氏ら9人が出席した。
同10時20分ごろから衆院議長公邸で衆参両院の正副議長らから意見を聴取した。首相官邸で開いた全閣僚会議を経て、臨時閣議で新元号を定めた政令を決定した。新元号は臨時閣議後に天皇陛下や皇太子さまに伝えられた。
1日付の官報号外には、政令とともに新元号の読み方を定めた内閣告示を掲載した。
元号に用いる漢字はこれまで中国古典(漢籍)を出典としてきた。政府は今回、漢文学や東洋史学だけでなく、国文学や日本史学を専門とする学者にも考案を委嘱したことを明らかにしている。
関係者によると、平成への改元時に委嘱した考案者にも国文学者が含まれていたが、日本古典を出典とする案は「平成」を含む3つの最終案には残らなかった。
元号は1979年施行の元号法に基づき、内閣の責任で定める。「平成」までに使われた漢字は72種類で最多は29回の「永」。2番目に多いのは「天」と「元」の27回。新元号「令和」の「令」を元号に使うのは初めてで「和」は20回目だ。
天皇陛下は4月30日に退位し、翌5月1日に皇太子さまが新天皇に即位される。憲政史上初の「退位礼正殿の儀」は4月30日午後5時からで、三権の長や地方自治体の代表ら338人が参列する。
新天皇に即位する皇太子さまは5月1日午前10時半から歴代天皇に伝わる神器などを引き継ぐ「剣璽等承継の儀」、同午前11時10分から即位後初めて国民代表の前でお言葉を述べる「即位後朝見の儀」に臨まれる。
剣璽等承継の儀の出席者は前例を踏襲し、皇族は成年男性に限り女性皇族や秋篠宮家の長男悠仁さまは参加されない。
天皇陛下は2016年8月8日、国民向けのビデオメッセージで象徴天皇としての務めに関する考え方についてお言葉を述べ、退位の意向を示唆した。政府はこれを踏まえ、天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議を設置。現天皇一代限りで退位を認める特例法を成立させた。
(04/01 13:17) 日経電子版より |