老夫婦のお話です。
妻の耳が悪くなり、心配した夫は、妻に補聴器が必要だと考えました。
妻にそのことをどのように伝えていいのかわからない夫は、その相談をするために家族のかかりつけの医者を訪ねました。
医者は家庭で簡単にできる聴力の検査方法があると教えてくれ、おおよその妻の聴力がわかれば、医者も判断しやすいと言うことでした。
「やり方はいたって簡単です」医者が説明し始めます。
「彼女から12メートルくらい離れたところに立って、普通の声で普通の会話を始め、彼女が聴こえるかどうかを確認します。もし奥さんが聴こえていないようなら、9メートル、6メートル、3メートルと、返事があるまで少しずつ近づいていきなさい」
その晩、妻はキッチンで夕飯を作っていました。
書斎にいる夫はこう思いました。
「ちょうどここは12メートル離れているな。よし確認してみよう。」
そこで普通の声でこう言いました。
「今日の晩御飯は何だい?」
返事はありません。
そこで夫はキッチンに少し近づき、9メートルくらいの距離から同じことを繰り返しました。
「今日の晩御飯は何だい?」
また返事はありません。
そこでさらに近づき、6メートルくらいの距離から尋ねました
「今日の晩御飯は何だい?」
やはり返事がありません。
そこで3メートルしか離れていないキッチンのドアのところから声をかけました。
「今日の晩御飯は何だい?」
全く返事がありません。
しかたなく今度は夫は妻の真後ろに立って尋ねました。
「今日の晩御飯は何だい?」
妻が初めて答えました。
「答えるのはもう5回目よ。チキンだと言ってるでしょ」